08.「BAS+MHEV」のお陰で1ℓ直列3気筒ターボとは思えない力強さを実現
「新型A3」のパワートレインは、1.0ℓ直列3気筒DOHCインタークーラー付きターボにベルト駆動オルタネーター・スターター(BAS)+48V駆動のマイルドハイブリッド(MHEV)を組み合わせた「30TFSI」と、2.0ℓ直列4気筒DOHCターボ(最高出力190PS/最大トルク320N・m)の「40TFSIクワトロ」、それに高性能バージョンの「S3」(最高出力310PS/最大トルク400N・m)というラインアップ。海外向けの1.5ℓ直列4気筒インタークラー付きターボの「35TFSI」については2021年秋に導入予定ですが、ディーゼルやPHEVについては現時点で未定となっており、この記事を書いている2021年8月時点では「30TFSI」、「40TFSIクワトロ」、「S3」の3本立てとなっています。
試乗車に搭載されている「30TFSI」は、日本へ市場導入されたプレミアムコンパクトセグメントとしては初めてベルト駆動式オルタネータースターター(BAS)と48Vリチウムイオンバッテリーを用いたマイルドハイブリッドドライブシステム(MHEV)を搭載。これにより、低燃費化を図るとともに加速時にはモーターアシストによって走行性能を一段と高めています。
「新型A3」の試乗当日は、1.5ℓTSI+MHEVを搭載した「新型GOLF」にも乗りましたが、「新型A3」に搭載されている「30TFSI」と比べても体感できるほどの差はなく、むしろ先代モデルよりもスムーズで力強い加速をしてくれます。7速Sトロニックトランスミッションとの相性も良く、低速域であってもスロットルレスポンスは上々。信号待ちでアイドリングストップしている際も、前走車が動き出せば自動的にエンジンが再始動する機構のお陰で、発進時にもたつくこともなく、極めてスムーズ加速していきます。
実は試乗する前は、「BAS+MHEV」が搭載されたとはいえ、基本は1ℓ直列3気筒DOHCインタークーラー付きターボエンジンなので、軽自動車+α程度のパワーではないかと思っていましたが、実際は事前の予測を遥かに上回るハイパフォーマンスぶりを発揮。パワー不足を一切感じることはなく、3気筒ながら振動や騒音も見事に抑えられており、「新型GOLF」の試乗レポートでも書いたように、良くチューニングされた4気筒1.8ℓエンジンのような力強いエンジンフィールに仕上がっています。
09.スポーティでありながらプレミアムコンパクトにふさわしい上質な乗り味
「新型A3」のハンドリングは、軽量の3気筒エンジンをコクピット寄りに搭載してあるお陰で大変レスポンスが良く、いとも簡単にノーズの向きを変えることができます。足回りは、このカテゴリーのクルマとしてはサスペンションストロークが長く、起伏や段差をしなやかにクリアしてくれる印象。225/40R18というスポーティなタイヤが装着されているので、低速域では多少ゴツゴツした感じはありますが、ハッチバックにありがちな後方からのロードノイズは低く抑えられており、スポーティでありながら、プレミアムコンパクトの名にふさわしい上質な乗り味を披露してくれます。
今回は8年ぶりにフルモデルチェンジを果たした「新型A3 Sportback(1st Edition)」を試乗しましたが、さすがはプレミアムコンパクトのパイオニアだけあって、デザイン、テクノロジー、パフォーマンスなど、すべてがワンランク上の領域へ到達している印象を受けます。こんな「新型A3 」は激戦区のCセグメントクラスの中にあって、実用性とプレミアム感を両立させたコンパクトカーとして、先代と同様に高い人気を博すのは間違いないでしょう。
ビデオリサーチ、ニールセン、Yahoo! Japanを経てフリーランスに転身。本職はマーケティングや広告だが、1990年代からモータージャーナリストとしても活動しており、とりわけ4WDやSUVには造詣が深い。
趣味はアウトドア(キャンプ、釣り)、バイク、アマチュア無線(JI1DLD)。犬と猫が好き。