03.フロントから始まる「Arteon」の特徴的なデザインはクラスを超越
フォルクスワーゲンが2017年に「初代Arteon」を発売したとき、「このクルマは伝統的なスポーツカーとエレガントで広々としたスペースを備えたファストバックのデザインを融合させた」と紹介していました。確かにフロントを見ると、スポーツカーとサルーンを融合したダイナミックなグランドツーリングカーという印象を受けます。
全体的なデザインは、アクティブボンネット(歩行者保護用の安全機構を統合)と、これと一体となっているラジエーターグリルを起点にしているのが特徴。実はフロントだけでなく、左右のホイールアーチの上まで覆うボンネットは、伝統的なスポーツカーが採用しているデザイン手法です。実際にボンネットを開けてみると、ホイールハウジングシェルが見える構造となっており、このカテゴリーのクルマとしては、とても珍しいボンネット形状が採用されています。カーデザインにおいては、たとえ息を呑むようなアイデアであっても、工業的に製造可能か否かという課題も存在しますが、「Arteon」はこれらのデザイン指標が一体化され、クラスを越えたデザインのグランドツーリングカーとなっています。
4.MQBだからこそ実現できた「新型Arteon」独自のパッケージング
「新型Arteon」は、当然ながらMQBプラットフォームをベースに製造されています。MQB(モジュラートランスバースマトリックス)とは、クルマを構成する各部位をモジュール定義し、そのモジュールを最適に組み合わせて製品を作り上げることを目標とする製造方法。フォルクスワーゲングループでは、パワートレインやサスペンション、ステアリングシステムなど多くの機能が集まる前輪からアクセルペダルまでを多くのモデルで共有化し、ホイールベースやトレッド幅が違う車種も同じラインで作ることを可能にしました。この結果、ひとつのパーツを異なる車種間でも共有できるので、生産が大幅に効率化され、コスト削減を実現しています。
「新型Arteon」は広い室内空間を実現するため、2,835mmという非常に長いホイールベースとなっていますが、どんなクルマもひとつの生産ラインで製造できるMQBのお陰で余分なコストを掛けず、理想のパッケージングを実現しています。
ちなみに「新型Arteon」は、いずれのボディタイプであっても全長:4,870 mm、全幅:1,875mm、全高:1.445mm、ホイールベース:2,835mm、トレッド:(フロント1,585mm リア1,575mm)と、まったく同サイズ。「初代Arteon」と比べると、下表のように全長で5mm、全高で10mmサイズアップされています。
05.「Arteon Shooting Brake」の誕生を容易にしたモジュラーデザイン
「新型Arteon」と「Arteon Shooting Brake」のサイドプロフィールを見ると、このクルマのデザインDNAを明確に理解することができます。「新型Arteon」のデザインは、全周を貫くキャラクターラインから下のロワーセクションとその上のルーフセクションで構成されており、どちらのモデルもロワーセクションはほぼ同じデザインとなっています。その一方で、Bピラーから後方へ向かうルーフセクションでは、ウィンドウデザインを含めてデザインが大きく異なっており、このモジュラーデザインのお陰で、まったく方向性の異なる「Arteon Shooting Brake」の誕生が容易になったわけです。