「マセラティ・クワトロポルテ。なんて素敵!な名前なんでしょう?」
こんな会話想像してください。A「どんなクルマ乗ってるの?」B「クワトロポルテだけど」かっこよすぎます!名前だけで好きになってしまいます!でも、よくよく考えてみるとイタリア語の「クワトロポルテ」は日本語で「4枚扉」という意味なんです。いわゆる「4ドア」です。国産車でこんなネーミング考えられません。「○○自動車の4枚扉乗ってる!」なんてないですよね?でも「クワトロポルテ」という響きにノックアウトされるのは、クルマ自体が屈しがたいオーラを放っているからに他なりません。
「クワトロポルテとの出会い」
クワトロポルテとの出会いは高校時代、自動車雑誌で見かけた4代目。マルチェロ・ガンディーニによる角ばったデザインとインテリアの豪華さ、そして世界中のどの車にも似ていないオーラに「いつかこのクルマに乗りたい!」と人生の目標を設定しました。
5代目はピニンファリーナ社、日本人デザイナーの奥山清行さんによるデザインで、先代とは一転、曲線を多用した有機的なクルマへと生まれ変わりました。これも見た瞬間「僕のクルマはこれだ!これに乗るんだ!」と人生の目標を再設定。実際、2週間ほど知人からお借りして乗りましたが、脳天を突き抜けるようなエンジン音と魅力を超えた魔力を持つインテリアにメロメロになりました。前フリが長くなりましたが、今回試乗したのは2013年に登場した6代目。最近、京都の街角でよく見かけるようになったマセラティ車は「ギブリ」でクワトロポルテはほとんど見かけません。価格が高いというのもありますが、車体がデカすぎるという理由もありそうです。でも、そのデカさは、美しいデザインを実現するためには必要不可欠なものなんです。斜め後ろから見てください!これだけのラインはなかなか実現できません。クルマは走らせてなんぼですが、クワトロポルテは止まっている姿を前から横から斜めから後ろから眺めているだけでも惚れ惚れするデザインです。
室内に乗り込むと、さらに魔力に引き込まれます。赤い革のシートは表面しっとり、身体に吸い付きます。ハンドルを握るとライバルたちに比べて細いんです。そっと優しく握るのが流儀。そしてアクセルペダルが軽い!踏み込むとマセラティ伝統の抜けるような排気音。管楽器を演奏するように軽いアクセルペダルを操作すれば、もうとろけてしまいます。
走り出すととろけている場合ではない
今回の試乗は、京都市内から綾部までの往復でおよそ120キロでした。高速あり、市街地あり曲がりくねった道もあり。市街地では信号から発進するたびに「パオーン!ババン!」という快音が響き何度、信号に引っかかっても「また、あのパオーン聞きたい!」となります。オーディオの音も素晴らしいですが、音楽はクルマ自体が奏でてくれますので、そちらを楽しみましょう。そして高速道路、最新のアダプティブクルーズコントロールを備えていますので、セットすれば前車との距離を調整しながら車線をはみ出さないようにステアリングもアシストしながら進みます。このときは、スピーカーから響くカンツォーネなどがピッタリ。大型車ならではの乗り心地に身をゆだねリラックスタイムです。高速を降りると、曲がりくねった道。大きな車体には厳しいかな?と心配しながら進むと、良い意味で裏切られます。「もっと曲がって!もっとアクセル踏んで!エンジンを回して!運転を楽しんで!」とクワトロポルテから語りかけてきます。実際は大きいのですが、まるで二回り小さなスポーツカーを運転しているような錯覚に陥ります。少し細いハンドルや、軽いアクセルペダルはこのためにあったんですね。ワインディングロードが一番の得意分野とは意外でしたが、いつまでもクワトロポルテとの社交ダンスを楽しんでいたい!終わりたくない!と心から思いました。