活版印刷を手がけるデザイン工房で特別な1枚をつくる。
京都一乗寺にあるデザイン工房「りてん堂」。扉を開けると、手差し式の活版印刷機「チャンドラー」のカタンカタンとリズミカルな音が響きます。
この工房の主人、グラフィックデザイナーの村田さんがこの印刷機とともに歩み始めたのは今から約5年前。それまでは、京都のデザイン・編集会社でエディトリアルデザインを主に手がけるデザイナーとして活躍していました。
転機が訪れたのは6年前、デザイナーとしての成長のため「印刷やレイアウトの原点ともいえる活版印刷を学びたい」と、週末を利用して京都の活版印刷会社へ修行に通いだした事。80歳をこえる現役職人の社長に学ぶ日々の中、活字の面白さを感じ始めていた村田さん。しかし、社長曰く「活版印刷の時代は終わり」だと考え、その時既に印刷所を閉めることを決めていたそう。
閉所されれば無残に捨てられてしまう、活版印刷機や膨大な量の活字たち。一度失ってしまっては、もう二度と手に入らないような貴重な品々を前に、活版印刷の可能性を信じ、独立することを決意しました。
活版印刷の面白さ、余白をデザインする。
工房では、活版印刷やデザインの面白さを知ってもらい、身近に感じて欲しいという想いから、ポストカードやレターセットなどのオリジナルの紙ものも販売しています。
印刷されたものを見ていると気づきませんが、活版印刷は余白部分も大切なデザインであることがわかります。文字と文字の間に金属製の「コミ」を入れ、デザインを整えます。
こうやって一つ一つ版をおこし、一枚一枚印刷するところまで全て手作業で行われる活版印刷。現在主流のオフセット印刷とは異なり、時間も手間かかりますが、刷り上がった1枚1枚はどこにもないたった一つの特別なものになります。
オリジナル作品が完成するまで。
りてん堂でオリジナルアイテムを作るには、組版と印刷料を合わせて、片面1色の100枚印刷で6800円が目安の料金です。オフセット印刷との大きな違いは、色数で金額が変わること。活版印刷は1色ずつ印刷するので、2色になると値段は2倍になりますが、奥様が素敵なアイデアを教えてくださいました。「色を楽しみたいのなら、色つきの紙を使えばインクは1色でも2色になりますよ」。
さらに、活版ならではの楽しみ方もできるとか。白い紙に色いインクで印刷すると、光に透かすと文字が浮き出てみえるそう。
活版印刷を愛し楽しんでいるからこそのアイデアにあふれた工房から生まれる、名刺やショップカード、挨拶状は受け取る人にも喜ばれそうです。
075-202-9701
京都市左京区一乗寺里ノ西町95
営) 10時〜18時
休) 日曜・祝日+不定休
※詳細はHPをご確認ください