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Kyoto Premium Talk『クルマと、わたし』vol.12 ゲスト 名和晃平さん(彫刻家)

彫刻家と語る
京都とアートのいま

 
輸入車、国産車の正規ディーラー業を主軸に、創業の地である京都を愛し、ホームタウンである京都に愛されながら躍進を遂げる、マツシマホールディングスの若きリーダー松島一晃&KBS京都出身の実力派キャスター・ジャーナリスト竹内弘一が、現在進行形で京都の文化や産業に多大なる貢献をされるゲストを招いて、ここでしか聞くことのできないオンリーワンな会話をお送りする『京都プレミアムトーク』。もちろん、トークのメインテーマはカーライフなのですが、その実、クルマにまつわる趣味的、嗜好的なおしゃべりに包まれているのは、各分野のトップランナーたちが秘めたる仕事観や人生観。つまりは、リラックスした雰囲気の中でクルマを主題に盛り上がった会話からは、そうそうたるゲストの皆さまのライフスタイルそのものがおぼろげに見えてくるというわけです。僭越ながら、いまからライフスタイルを覗かせていただくのは、京都から世界へアートを発信する彫刻家の名和晃平さん。学生時代にラガーマンだったという共通の経歴から、年齢や立場を超えて松島一晃にシンパシーを覚えると語る氏は、自身が主宰するスタジオ『Sandwich』名義で、本日のロケ地であるマツシマホールディングスが運営するコマーシャルギャラリー『MtK Contemporary Art』のデザイン監修を務めるなど、芸術を通して社会に貢献したいというマツシマホールディングスとのスクラムもがっちり強固。それでは、京都国立近代美術館や京都市京セラ美術館などが立ち並ぶ、関西屈指のアートスポット岡崎から『京都プレミアムトーク』をお届けします。
 

Guest


名和晃平

名和晃平(なわ こうへい)
彫刻家/Sandwich Inc.主宰/京都芸術大学教授
1975年大阪府生まれ。京都市立芸術大学大学院美術研究科彫刻専攻修了。2009年、京都・伏見区に創作のためのプラットフォーム「Sandwich」を設立。
セル(細胞・粒)という概念を機軸として、彫刻の定義を柔軟に解釈し、ガラスや液体などのさまざまな素材や3Dスキャンなどの最新の技術を用い、彫刻の新たなあり方を追求。近年では、アートパビリオン《洸庭》など、建築のプロジェクトも手がける。2015年以降、ベルギーの振付家/ダンサーのダミアン・ジャレとの協働によるパフォーマンス作品《VESSEL》を国内外で公演。2018年にフランス・ルーヴル美術館のピラミッド内にて彫刻作品《Throne》を特別展示。
 
公式サイト http://kohei-nawa.net/
Sandwich http://sandwich-cpca.net/


 

彫刻家が見た、モビリティとデザイン/テクノロジー

 

竹内よろしくお願いします。まずはクルマの話題から、名和さんのお気に入りの一台を教えていただけますか?
名和以前、ジャガーXJのダイムラーモデルに乗っていたんですが、そのフォルムは好きでしたね。
竹内あの頃のジャガーって、動物的とも言える有機的なラインやフォルムが特徴的ですよね。クルマを見るときは、どこに着目しますか?
名和デザインと乗り心地ですね。特にモビリティのデザインは、時代ごとのトレンドが大きく反映されているのが特徴的です。ヒットしたデザインや機能が拡大されて業界の中心的なムーブメントになっていく、といった大きな運動が見えるのは進化論のようで興味深いです。一方で、量産を前提としている以上ある程度は仕方ないでしょうが、もっと個性的なものがあってもいいんじゃないかなとは思います。
竹内トレンドの変化には、製造技術の進歩なども影響を与えていると思います。例えば、ちょっと前まではプレスラインをくっきり何本か通すのが流行っていましたが、ここ数年はラインを用いずに躍動感を出すのが主流です。名和さんの作品はテクノロジーと造形が緊密に結びついている印象があるのですが、そうした視点からクルマを見ることはあるのでしょうか。
名和組立工程がロボットアームになったり、金型による鋳造ではなく削り出しでパーツを作ったりといった技術の変化を見るのは面白いですね。他にも、電気自動車に移行すると内燃機関が必要なくなるので、今までのデザインが根本的に転換するでしょうね。
竹内電気自動車はもっと自由な形にできるはずなのに、今発売されているものは従来のクルマの造形を踏襲していますよね。やっぱり、急に新しいものを受け入れるのは難しいんですかね。
名和「クルマという概念」に乗りたい、というのはあるでしょうね。だからその前提となる概念からかけ離れてしまうと、気後れしてしまうのではないでしょうか。
松島そうした中で名和さんは、これからのクルマの可能性はどこにあるとお考えでしょうか。
名和晃平
名和これまではタイヤを前提としてきたので、そこから解放されるとより面白いと思います。自動運転が一般化すると運転の概念が変わり、車内での過ごし方も変わる。クルマではなく「モビリティ」という視点で捉えると、いろいろなものが既に生まれていますよね。例えば電動車いすなども個人スケールのモビリティだと言えますし。そうしたさまざまな移動の選択肢が増えていくように思えます。
竹内クルマは生活空間であると同時に移動空間でもありますからね。以前このコーナーに出てくださった経営者の方も「現代社会では一人の時間はすごく貴重だから、車内でもっと自由に過ごせるクルマが出てくるといい」とおっしゃっていました。これから電気自動車が普及すると、走行性能や乗り心地も均一化していくと思います。そうなると、内観や外観のデザインによってどれだけ新しい価値を付与できるかが問われてくるのではないでしょうか。
竹内弘一、名和晃平、松島一晃

 

 
 

創作の拠点に必要なもの

 

竹内弘一

 

竹内松島さんと名和さんは以前からお知り合いということで、お互いの印象をうかがってもよろしいですか。
名和以前からのラグビー友達で、ときどき京都で一緒にご飯に行ったりしています。実直で優しい方ですね。
松島名和さんは日本のアート界を代表する一人だと思うのですが、まったく気取らず、いい意味で職人気質なところもある方ですね。自分の表現にまっすぐ向き合って、本当にやりたいことをやってらっしゃる。
竹内学生時代から京都で過ごされて、制作の拠点もずっと京都ですよね。ほかの場所に移ろうと思ったことはなかったんですか?
松島一晃
名和ロンドン、ニューヨーク、ベルリンなど海外に住んだこともあるのですが、なぜか京都が一番合ってますね。東京にもオフィスを持っているのですが、京都はどこか時間の流れ方が違う印象があります。
松島ゆったりしていますよね。特に、名和さんの制作拠点であるSandwichは独特で、いろいろなものが凝縮されている印象があります。自然に囲まれて浮世離れしているように見える一方で、京都の文化ともしっかり繋がっている場所ですよね。
竹内僕は子ども宅食プロジェクトという活動をしているのですが、実はこの活動の拠点がSandwichと同じ伏見なんです。名和さんは今の活動場所とどのように出会ったのでしょうか。
名和以前は淀の競馬場近くにある工業団地の鉄工場を借りて制作をしていたんですが、ある日ポストに不動産屋のチラシが入っていて、そこに今の向島の物件が載っていたんです。ちょうどスタジオが手狭になってきていたので見に行ったら、3倍くらいの広さがあったので移転を決めました。
松島景色がいいですよね、川があって。
名和そうそう。宇治川沿いで、いい風が吹くんですよね。
竹内弘一、名和晃平、松島一晃

 

 
 

MtK Contemporary Artの誕生秘話

 

竹内マツシマホールディングスは京都を拠点に、京都の時間の流れの中でお客様と向き合い、満ち足りた時間を過ごしてもらうことを大切にしています。その意味で、名和さんは最も京都的なものを体現しようとしているように感じられます。今日の会場であるMtK Contemporary Artにもかかわられていますよね。
名和はい、リノベーションのお手伝いをしました。
竹内そんなMtK Contemporary Artもオープンして2年になりますが、非常に特別な場所に特別なギャラリーができたという印象があります。目の前には京都市京セラ美術館と京都市動物園、すぐ横にはカフェ、さらにカーディーラーと、マツシマだからこそできた形態だと思うのですが、この立地においてデザインを考えるうえで、どのようなことを意識されたのでしょうか。
名和建物に入る際に、いかに展覧会へ向けた気分へとスイッチを入れられるかを意識してお手伝いしました。例えば展示スペース入口に内部の形状を反映させた屋根型をつくって「MtK Contemporary Art」のアイデンティティをイメージしてもらえるようにしたり、アプローチが庭と上手く繋がるように、造園家の齊藤太一さん率いるSolsoに関わってもらいました。
松島名和さんには、全体を通じたプロデュースをしていただいたと思っています。エントランスのアプローチから雰囲気がつくられており、そこからギャラリーに入って空間が一気に広がるところは特に印象的ですね。外観はもとの日本建築の趣を残しているのですが、内部は非常にシンプルで、各部が綺麗に整えられているのも特徴的です。
名和消防法を遵守しながら機能や設備を隠し、建物内をシンプルな一つの箱として仕上げるのが非常に難しかったですね。
竹内鑑賞に没頭できる空間ですよね。
名和一般的にこのサイズの建物をギャラリーにすると、照明をはじめとした設備類と鑑賞者の距離が近くなりすぎてノイズになってしまうんです。そこで、できるだけ設備類を隠し、小さな作品でも集中して鑑賞できることを意識しました。
松島ありがたいですね。ギャラリーにカーディーラー、カフェと、かなり独特な複合施設になっていると思います。岡崎地域は京都市京セラ美術館のリニューアルをはじめ、文化芸術的な盛り上がりが非常に強くなってきています。私たちはそこに乗りつつ、さらなる活性化のための新しいアプローチができればいいなと思っています。
竹内弘一、名和晃平、松島一晃

 

 
 

アーティストが見すえる、京都のこれから

 

竹内アート関連のイベントも増えてきましたし、京都の文化的なポテンシャルが、新しいかたちで街に現れてきているように感じています。
松島まだまだ京都の方もアートに対する接点が少ないと思うので、さらに盛り上げていきたいですね。
名和文化庁も移転してきましたし、ミュージアムやアートイベントがどんどん増えて、盛り上がっていきそうな印象がありますね。京都は美術大学が複数あり、美大生や沢山の若いアーティストが活動しています。ですので、MtK Contemporary Artのような、彼らを支援するギャラリーや文化施設の存在は非常に重要だと思っています。
松島マツシマでは、2018年のKYOTOGRAPHIEをきっかけにアート領域をサポートし始めました。最初は単に面白そうだと思って始めたのですが、徐々に大きくなっていき、最近はビジネス業界でアートイベントを行う際に声を掛けていただくことも増えてきました。認知が広まってありがたいと同時に、やはりもっとさまざまな企業が参画して、みんなで京都の文化芸術を支えていけたら嬉しいなと思います。
名和マツシマホールディングスさんのような、アートを支援してくださる企業を都市に増やすことは重要です。しかし、文化圏を育てるには単独の取り組みではなく、複数の企業や団体が足並みを揃え、質と密度を保ちながら実践する必要があります。都市規模でこうした文化事業に注力できるタイミングはなかなかないので、これからの京都は非常に重要な転換点にあると思っています。
竹内うちは高校生と中学生と小学生の子どもがいるんですけど、そういうアートに触れる行事って、学校でほとんどないんですよ。
名和以前、文科省から義務教育のカリキュラムの内容をみると、芸術教育、特に美術の時間は削られていってますね。美術史をはじめとしたアートの下地を学ぶ機会や子供たちが本物のアートに触れる機会が乏しい現状は、非常にもったいないと感じますね。
竹内小中学校や幼稚園の頃に興味のあったものって、一生好きでいられますよね。でも大人になってから美術の世界にエントリーしようとすると、どこか気負い過ぎてしまってなかなか上手くいかない人が多いように思っています。
名和そうですね。子どものときから自然に美術館やギャラリーに通えたらいいと思います。
松島子どもの成長にも役立ちますよね。「私はこれが好き」とか「私はこれを見てこう思った」というように、自分の思ったことをきちんと表現できる機会って、すごく大事だなと思っています。アートに触れることはもちろん、そこからアウトプットをするところまで発展させられたらいいなと思います。
名和都市で目に触れるものって量産品がほとんどですよね。だからこそ、個人の想像力から生み出された唯一性の高いものと出会うことは、一人ひとりにとってすごく濃密な体験になると思うんです。ここに、アートがいま注目を集めている本当の理由があると思っています。均質化した現代の都市のなかで異物を体験するには、アートしかないんですよね。
松島名和さんのお子さんめちゃめちゃすごいですよ。今6歳なんですけど、すごいアートを作っています。英才教育ですね(笑)。
竹内「なんぼでも描いていいよ」っていう環境にいることも大きいでしょうね 。
名和そうですね。いわゆる美術教育というよりも「一緒に絵を描く」といった、遊びの延長から発展していくんだろうと思います。
竹内いくら京都の街に文化的な蓄積があっても、実際に住んでいる人たちがそれに親しんで、触れて、遊んでいかなければ街は完成しないですよね。
松島小さいときからアートに触れて、それを自分たちのものだとちゃんと思っている、という意味では、パリは近いイメージがありますね。
名和パリも古いものと新しいものが同居する面白い都市ですよね。こうした歴史ある都市の文化って時間をかけて醸成されたものなので、短期的に真似しようと思ってもなかなか難しいんです。そういう意味でも、京都にはまだまだポテンシャルがあるように思えます。
竹内マツシマも関わるアートの観点から、街づくりや文化についてお話を伺いました。名和さん、本日はありがとうございました。
竹内弘一、名和晃平、松島一晃

 

 

Location


MtK Contemporary Art
(http://mtkcontemporaryart.com/)

2021年3月に株式会社マツシマホールディングスが開廊したコマーシャルギャラリーです。現代アートを通じて社会に貢献したいと考えていたマツシマホールディングスと、ディレクターである現代美術作家・鬼頭健吾の「良い作品を見ることができる場所を京都につくりたい」という思いが一致し、ギャラリーとしてスタート。京都の美術館や演劇ホールなど数々の文化施設が集中する岡崎地区において、西日本に縁のあるアーティストの展示を中心に、国内外で注目を集めるアーティストの個展やグループ展を年に6回のペースで開催しています。
また、若手作家を紹介・支援するとともに、京都のアートシーンを活性化させることを目的とした展覧会プロジェクト「mtk+」を開催しています。隣接する「CAFE Dot.S」(ドットエス)を会場とし、ジャンルを超えたさまざまな若手アーティストの展覧会を行っています。
 
〒606-8334 京都市左京区岡崎南御所町20-1

Facebook @mtkcontemporaryart
Instagram @mtkcontemporaryart

MtK Contemporary Art

 

Profile


マツシマホールディングス社長 松島一晃

松島一晃
1986年生まれ。「クルマを、文化に」という想いのもと、京都を中心に10ブランドの正規ディーラーが複合するグループ会社 マツシマホールディングスの社長。本企画ではインタビュアーに初挑戦。ゲストの感性や人間性に触れる対談にご期待ください。

竹内弘一

竹内弘一
I977年生まれ。キャスター・ジャーナリスト。京都先端科学大学特任教授。21年間、KBS京都アナウンサー兼記者として活動したのち、独立。現在は社会起業家として京都市でこども宅食事業を立ち上げ、大学院で論文執筆に励む。培った人脈を活かし、本企画のゲストブッキングを行う。

 


写真:加川雄一(U-one Photography Studio)

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