丹後の美しい海をイメージした手織りネクタイ
「丹後ブルー」と名付けられた、美しいネクタイがあります。日本海に面した京都の丹後地方、その海の色をイメージした鮮やかなブルーが印象的。商品のタグには「KUSKA」と「ALL HAND MADE IN TANGO」が入っています。
砂浜を歩くとキュッキュッと音がする“鳴砂”で有名な「琴引浜」は、丹後半島の西部に位置し、日本の渚百選にも選ばれている美しい浜です。鳴砂は、健全な自然環境が保たれている証で、琴引浜には美しく白い砂浜と青く透き通った海が広がります。「丹後ブルー」のネクタイの鮮やかな青色と光沢は、丹後の海の色と輝きを連想します。
また丹後の海は、関西の冬のサーフィンスポットとして人気があります。立体的な陰影のある織り柄は、沖から押し寄せる波を連想します。
手仕事にこだわったからこそ生まれる風合いや立体感
KUSKAは、1936年に丹後で創業した織元・クスカ株式会社の3代目楠泰彦(くすのきやすひこ)さんが立ち上げたブランドです。工房とファクトリーショップは、日本3景の天橋立に近い京都府北部丹後地域の与謝野町(よさのちょう)、京都縦貫道「与謝天橋立IC」を降りて約20分のところにあります。
丹後地方は、江戸時代中期から続く「丹後ちりめん」が地場産業で、現在も和装用白生地の約60%を生産する一大産地です。京都で生産されている着物の80%、帯となると90%が丹後産。とはいえ、近年は海外から安価な生地が入ることと着物の需要の減少によって、最盛期の数%の生産量まで減少しているそうです。
クスカ株式会社は、白生地を織って京都市内に納める工場でした。家業を継いだ楠さんは、代々受け継がれてきた丹後の手織り技術を生かして、今のライフスタイルに合った商品を作りたいと、機械織り機をすべて処分し、手織り機を導入しました。
KUSKAの商品は、主力のネクタイのほか、マフラー、スニーカー、女性用の雑貨などがあり、編んだ生地の表面に色を入れる「染め」とは違い、織りによって柄や凹凸や表情をつけるのが特徴です。すべて手織りで作られ、空気を含ませてゆっくりと織ることで生まれる風合いや立体感、シルクの上質な光沢感と陰影が魅力です。
機械織りは、糸にかかる力が強くなり、平面的な織物になります。一方、手織りは職人が糸の締まり具合を微妙に調整しながらソフトに織ることができるため、糸と糸の間にふんわりと空気を含み、立体的な3次元の世界観を表現することができます。例えば、ネクタイに使われている「絡み織」という特殊な織り方は、かなり高度なテクニックが必要。経糸(たていと)を緯糸(よこいと)に絡ませるためには、ゆっくりと織らないといけないため、機械でも同じようなものはできても、手織りほど細かく立体的には織れないとのこと。
手織りは機械織りに比べると圧倒的に時間がかかり、1人の職人が1日で織れるネクタイは3本か4本。それ以外にも、生糸の染め、精錬(不純物などを除去する工程)、織り機の準備、縫製までの作業を考えると、ネクタイ1本にかかる時間と手間は相当なものになります。
スニーカーには、裂き織り(さきおり)という江戸時代中期から伝わる再生衣料の伝統技術が使われています。着なくなった着物などをもう一度ほどき、それを1cm程度に裂いて糸として再利用します。ものを大切に使う気持ちを込めながら、オリジナルの手織り機でゆっくりと丁寧に織りこんでいくことで、機械織りにはでない独特の風合いと温かみのある織物が完成します。
極上のやわらかさを求めて糸から開発したシルクマフラー
“カシミヤを超えるシルクの風合い”と題した「手紡ぎシルク真綿マフラー」は、もっとふわっとした質感にしたいということで、シルク糸に真綿を混ぜた独自開発の糸を使っています。真綿(まわた)とは、綿(めん・コットン)とは違い、蚕の繭(まゆ)を綿状に引き伸ばしたもの。機械では織れない糸を作り、その糸を使うための織り機自体から作ることで、糸のふわっとした質感をそのまま商品が完成しました。織るのに1日、糸を作ることを考えると、1日1枚は作れてないマフラーです。
ファッション性と芸術性をささえる丹後の伝統
KUSKAの手織り機は、着物などを織っていた数十年前の機械を再利用したり、廃業された工房の織り機譲り受けたりしたもの。足りない部品は木工大工さんや自社で作って、部品を足して行きながらカスタマイズして使っています。
織り機にセットされる経糸は約4000本。経糸が残り少なくなると、新しい経糸を継いでいきます。この「経継ぎ」作業専門の職人さんがいて、2人で半日かけて一本一本正確に糸を繋げていきます。。
KUSKAでは、昔ながらの「紋紙(もんがみ)」を使う織り機も1台現役で稼働しています。紋紙とは、織物の図柄を織り出すためのデータで、厚紙にあけられた穴を織り機が読み取って縦糸の上下を制御します。紋紙を作る職人は、いまでも丹後に数人いるとのこと。最近は、紋紙の役割をUSBメモリーに入ったデジタルデータに置き換えた織り機に移行していますが、こちらも専門の職人がデータを制作します。
このような伝統と技術がいまなお丹後に残っているからこそ、KUSKAの新しいチャレンジができるのです。
KUSKAの商品が実際にどのように作られているのか、丹後の工房を見学できます。
事前にメールまたはお電話でご予約ください。
TEL) 0772-42-4045
見学可能時間) 平日10:00~15:00
所用時間) 20分程度
0772-42-4045
京都府与謝郡与謝野町岩屋384-1
営) 10:00〜17:00
休) 土日祝(年末年始、GW、夏季休業あり)
0772-42-4045
東京都千代田区内幸町一丁目7番1号 日比谷OKUROJI No.H03
営)
休)
9月10日オープン予定