「大文字」といえば全国的にも有名で、「あ~、京都のあの山ね」と山の斜面に浮かび上がった「大」の火文字を誰もが連想するでしょう。
毎年8月16日、夏の京都の夜空を彩る「五山送り火(ござんのおくりび)」は、お精霊(しょらい)さんと呼ばれる死者の霊をあの世へ送り届けるとされるお盆の行事です。京都市の東側にある大文字山の斜面には「大」の文字に火が灯ります。
東の「大」の字のほかに、京都市北部には「妙法」の文字、北西部には船をかたどった「船形」、西部・金閣寺付近にはもう一つの大の字「左大文字」、西部・北嵯峨の「鳥居形」の5つがあります。午後8時ごろ大文字に火が灯されると、最後の鳥居形まで順番に点灯されていきます。
大文字山の「大」の字は、第一画の横線は長さ80m、第二画の左斜め線は160m、第三画の右斜め線は120mあります。火は繫がった線状に燃やすのではなく、75基の火床を並べて形作られます。火床は、耐火性の強い石が用いられた基礎台の上に、松割木を井桁に組んで積み重ねたもので、高さは1.3mになります。
送り火で有名な「大文字山」は京都市内から眺める山と思ってしまいますが、五山の送り火の山の中で唯一自由に登れる山で、「大」の字を燃やしている火床まで登ることができるます。
大文字山のハイキングコースはいくつもありますが、その中でも銀閣寺から送り火の火床までのコースは、左京区近辺の小学校が学校行事として登ったり、健康維持のために年配の方が毎日登ったり、お子様連れの家族でも楽しめるハイキングコースになっています。初めての人は、この銀閣寺から登るといいでしょう。
哲学の道から銀閣寺の参道を進み、銀閣寺には入らず手間を左に、少し行った八神神社を右に曲がるとすぐに登山口があります。ここから標高300mぐらいの火床までは、大人の足で40分ほど。山道のほとんどは、木やコンクリートの階段が整備されていて、安全に登ることができます。
階段を登り切りって火床に着くと、急に視界がひらけ、京都盆地を一望できる絶景が広がります。京都御所、二条城、上賀茂神社、下賀茂神社、吉田山、平安神宮、京都タワーも見え、京都市内が迫りくるような感覚になります。京都盆地をぐるりと取り囲む山々の中には、千日詣(せんにちまいり)で有名な愛宕山や、送り火が行われる他の四山を全て眺めることができます。京都が凝縮された大パノラマです。
大文字山の山頂(標高466m)は、火床からさらに30分ほど進んだところにあります。火床を過ぎると急に道が悪くなります。ここから先はトレッキングシューズや登山靴など、それなりの装備が必要です。山頂からは、条件が良ければ大阪の「あべのハルカス」が遠望できます。
大文字山のハイキングコースは初球から中級くらいまでいくつもあり、銀閣寺、法然院、霊鑑寺、蹴上、山科の毘沙門堂裏手などからの入山できます。また京都から大津市まで踏破することも可能です。この地域は、地元の人々によって古くから保全されてきたため、市街地に近くても緑多く、自然豊かです。
たとえば、銀閣寺から火床へ向かう整備されたハイキングコースと並行して、山頂まで自然の中を歩くコースもあります。京都の観光スポットのすぐ近くであることが嘘のような豊かな自然があり、木々の葉が風に揺れる音や小川のせせらぎ、鳥のさえずりが聞こえ、喧騒から離れた静かな空間を満喫できます。
大文字山のハイキングコースは手軽に行けるエリアですが、登山道が明瞭ではないところもあり、道迷いをすることもあります。「YAMAP」「山と高原地図」「ヤマレコMAP」などの登山用GPS地図アプリを準備していくことをおすすめします。
大文字山ハイキングへは、銀閣寺を通り過ぎたところからスタートします。銀閣寺周辺には駐車場がありますので車でのアクセスも安心です。公共交通機関を利用の方は、京都市バスの銀閣寺方面へ乗車の上、「銀閣寺道」もしくは「銀閣寺前」で下車、歩いて約10分で大文字山の入り口に到着です。