美しい茶畑と宇治茶グルメを求めて国内外から観光客が訪れる絶景スポット
伝統文化が息づく京都府の中でも、特に南部の地域は、長い歴史の中で「抹茶」「煎茶」「玉露」を生み出し、日本茶文化を育んだ場所です。
京都府の南端、奈良県との県境近くに位置する和束町の茶畑は約800年と歴史が古く、京都を代表するブランド「宇治茶」として出回っているお茶の約4割を生産する一大お茶産地です。別名「茶源郷」とも呼ばれ、山々の斜面には一面の茶畑が広がっています。
和束町や周辺地域でお茶栽培が発展したのは、気象や土壌に恵まれていたことのほか、昼夜の寒暖の差が大きく、香りのよいお茶の栽培に適していたこと。そして、盆地の中心を流れる和束川によって発生する霧が光をさえぎることで、強い日差しから茶の葉を守ってくれると同時に旨味と香りを生成するからといわれています。
和束町の茶畑は斜面が多く大型の機械が入れないため、茶農家は作業をしやすいように畑を整備し、美しい緑の縞模様が並ぶ景観ができあがりました。整備された茶畑からは、より良質のお茶が採れるようになり、その品質の高さから和束は高級茶の産地としても知られています。和束町の美しい茶畑の波模様は農家の汗の結晶なのです。
2008年に「京都府景観資産」第1号に登録され、2013年に「日本で最も美しい村」連合に加盟、2015年には「日本遺産」に認定されました。
いつしか、この和束町の茶畑景観を見るために、海外からの観光客が訪れるようになり、その美しさが日本人にも知られ、観光バスでツアー客が訪れ、2018年ごろには年間約7万人が訪れるるほどの人気スポットとなりました。桃源郷をモチーフとした『茶源郷』というネーミング、SNSを駆使した海外へのアピール、農家へ泊まって農作業が体験できる「農泊」など地元を巻き込んだプロジェクトになどが功を奏した結果です。
10月の半ば以降、一日の平均気温が20度を下回る頃になると常緑樹であるお茶の木の成長が止まります。この頃から茶畑の枝を切って樹形を整える作業が始まり。畝(うね)はシャープに成型され、芸術作品さながらの様相になります。
4月になって新芽がある程度出揃うと、日光を遮るために黒い覆いをかけ始めますので、茶畑の見頃は、11月から3月までがベストシーズンです。
山あいの傾斜地や丘陵の上など様々な土地が茶畑として利用され、緑と黒の縞が幾何学模様を描くように続いています。黒い線に見えるのは茶畑の細い通路で、地元の方の話では、きれいに手入れしている畑のお茶は美味しいお茶になるとのこと。和束町の自然の地形と、茶畑を美しく保つ人の手の両方があってこそ、日本を代表するブランドの宇治茶と、観光客が集まる造形美を作っているのです。
和束町には、いくつかの茶畑ビューポイントが設けられています。
釜塚(カマツカ)の茶畑
白栖の茶畑
撰原の茶畑
石寺の茶畑
釜塚(カマツカ)の茶畑
急斜面の山頂付近まで先人がすべて手鍬で開墾した釜塚の茶畑。茶畑と昔ながらの雰囲気を残す建物が組み合わさった独特の景観が楽しめます。
白栖(しらす)の茶畑
いろいろな模様の茶畑風景が楽しめる白栖の茶畑
石寺の茶畑
和束町で一番有名なのが、石寺の茶畑。小高い山の全て茶畑になっていて、空に向かって続く茶畑の迫力が魅力です。2008年には京都府景観資産登録地区の第1号に認定されました。府道5号線の和束高橋の信号から民家や木が並ぶ道路を登り、カーブを曲がりきったところで視界が広がると、山一面を覆う広大な茶畑が目の前に現れます。どの場所からどう撮影しても、SNS映えすること間違いなし。道路沿いにある「dan dan cafë」では、ガラス張りの店内からゆっくりと景色を堪能しながらランチやカフェメニューを楽しめます。
和束町へのアクセス
山々に囲まれた秘境ともいえる和束町へは、やはり自動車で行くのが便利です。京都・大阪からは80分程度、奈良からは30分ほどです。
もちろん公共交通機関でもアクセスできます。最寄りのJR加茂駅までは、JR京都駅からは約60分、JR大阪駅からは約66分。JR加茂駅からは、奈良交通の66系統バス(和束町小杉行き)に乗り、茶畑周辺まではバスで15分ほど。
バスは1時間に1本程度のため、事前にバス時刻表を確認しておくとよいでしょう。
茶畑散策にぜひお勧めしたいのがレンタル自転車です。茶畑に近づくことができる道路は狭く、駐車場スペースも限られています。「和束茶カフェ」と「和束町観光案内所」では、電動アシスト自転車をレンタルできますので、坂道の多い茶畑を楽に周遊できます。
茶畑は農家さんの努力の結晶です。茶畑の中や立ち入り禁止区域には入らないようにしましょう。
0774-78-4180
京都府相楽郡和束町白栖大狭間35
営) 月曜〜日曜 10:00~17:00
休) 12月〜3月:月曜定休、年末年始
地元の農家直売の和束茶はもちろん、和束茶を使ったスイーツを味わえるカフェ&ショップ。お茶だけでも100種類以上を直売し、お茶のスイーツや加工食品も取り扱っている。レンタサイクルの受付、MAPなども揃い、観光案内の拠点にもなっている。
0774-66-1185
京都府相楽郡和束町石寺東谷1-1
営) 10:00~17:00
休) 火曜・水曜
「石寺の茶畑」の景色を堪能できるカフェ。ランチのdandanごはん(電話予約がオススメ)やカフェメニューが楽しめる。地元の抹茶やほうじ茶を使ったラテ、スイーツ、ジェラートが人気。