fbpx

with Art Vol.1 グランマーブル代表取締役「山本正典」

鬼頭健吾《untitled (hula-hoop)》(2020)京都市京セラ美術館「Full Lightness」展示風景

鬼頭健吾《untitled (hula-hoop)》(2020)京都市京セラ美術館「Full Lightness」展示風景
Courtesy of rin art association | 撮影: 木暮 伸也

 

長い年月を経て
形を変えていく石のように
アートで私が変わっていく。

 

コロナに見舞われた2020年、そしてこの一年は、「with Corona」という言葉とともに、どう生きるかが見つめ直された時間でもありました。社会における学び方や働き方の概念だけでなく、自宅で過ごす時間が増えたことで、一人一人の暮らしにも変化が起きています。
「with Art」は、そんな現在において、アートが私たちにもたらすものは何か、今一度見つめようとする試みです。私たち自身、他者との関わり、日々の暮らしがいかにその形を変えていくかを探るべく、アートと個人のパーソナルな関係性にフォーカスしていきます。そこには、この世界を生きる上でのヒントが隠れているかもしれません。
「with Art」のはじまり、はじまり。


 
 

鬼頭健吾

ディレクターが語る、
MtK Contemporary Art のこと。

 

鬼頭健吾

 

今年3月、京都市京セラ美術館や京都国立近代美術館など、文化施設が立ち並ぶ京都の文教地区岡崎に、マツシマホールディングスがオープンした〈MtK Contemporary Art〉。ディレクターを務める現代美術作家・鬼頭健吾に、ギャラリーに託す思いを聞きました。
 
鬼頭健吾 | きとう・けんご
1977 年愛知県生まれ。京都芸術大学大学院教授。2001 年名古屋芸術大学絵画科洋画コース卒業後、2003 年京都市立芸術大学大学院美術研究科油画修了。
主な個展にハラミュージアムアーク「Maltiple StarⅠ,Ⅱ,Ⅲ」展、グループ展には、森美術館「六本木クロッシング2007:未来への脈動」展、国立新美術館「アーティストファイル」展、エルミタージュ美術館「Mono No Aware」展、高松市美術館「ギホウのヒミツ」展など。
2020年、京都市京セラ美術館にてリニューオープン後、初の展覧会として個展「Full Lightness」が開催された。2008年五島記念文化賞を受賞しニューヨークに1年滞在し、その後ドイツベルリンにて制作活動。フラフープやシャンプーボトルなど、工業製品の現代的なカラフルさと、生命体や宇宙を感じさせるような広がりを融合させた作品で、国内外から高い評価を受ける。

「京都に新しいアートシーンを作りたい。」

 

—— ギャラリーを始めたきっかけとは?
京都や関西には多くのアーティストが住んでいる。アートフェアや京都市京セラ美術館にできたザ・トライアングルなど、若い人が作品を発表する場は増えてきたものの、中堅以上は東京や海外に行ってしまうのが現状でした。“良い作品を見ることができる場所が、京都にあったなら”と思っていたところ、創業の地である京都を拠点に、現代アートを通じて社会に貢献したいと考えていたマツシマホールディングスと想いが一致して、ギャラリーがスタートしました。

 
—— ディレクションにおいて大切にしたいことは?
作家の視点。取り上げている作家も関西ゆかりの人が中心。これまでに関わりがあり、共鳴した人たちです。それぞれの作家が持つ視点を大事にしながら、個性の違う複数の作家を組み合わせることで、作品の新しい読み解き方を提案できたら、と考えています。
 
—— 今後の活動について教えてください。
若手育成の場となるような展示、絵画のみならず、写真や陶芸などジャンルを横断するような展示に挑戦したい。京都に新しいアートシーンを作ることができれば、と願っている。
MtK Contemporary Artがどのように成長して行くか、今後も目が離せない。まずは、是非足を運んでほしい。
 

MtK Contemporary Art
京都市左京区岡崎南御所町20-1
075・754・8677 10時〜18時
月曜休廊(祝日の場合は営業)
企画展は年に6回。2022年1月8日から2月23日まで伊藤存、かなもりゆうこ、長島有里枝による3人展「この隙に自然が」が開催中。
https://mtkcontemporaryart.com/
 


 
 

山本正典
with Art Vol.1

 

記念すべき「with Art」の第一回目は、グランマーブルの代表取締役である山本正典氏。京都を拠点にマーブルデニッシュの製造販売をはじめ、音楽やアートの分野へ支援を続ける山本氏とアートとのパーソナルな関係を見つめます。

 

山本正典

 

山本 正典 | やまもと・まさのり
株式会社グランマーブル代表取締役。1996年創業。「京都・伝統・文化・クリエイティブを応援する」をコンセプトに、マーブルデニッシュの製造・販売を行う。そのほか、2010年にgallery PARCを創設、2018年にはマーブルデニッシュ×シャンパーニュ×日本酒×アートを楽しむカフェサロン「祇園ちから」をオープン。ピアニストの中野公揮、チェリストのヴァンサン・セガールのデュオコンサート「Lift」を企画するなど幅広く手がける。

山本正典 scene_1

山本正典 scene_2

—— 最初のアートとの接点は?
小学生の頃、当時、京都市立芸術大学の学生だった叔父が開いていた絵画教室に通い始めました。その教室では、写生に出かけたり、絵を描くことだけでなく、夕方に御所からセミの幼虫を持って帰ってきて孵化の様子を見たり、夜中に山中へカブトムシを取りに行ったりといった、自然と触れ合う体験をしました。アートというかその叔父に夢中だったことを思い出します。振り返ってみると、アートに結びつく原点はここにあったと感じます。 美術大学に憧れはあったけれども、商学部へ進みました。それから40代半ばまでは、アートは好きだけれど、美術館巡りをするだとか、コレクターになるだとか、そういうこともなく来ました。
 
—— 再びアートに結びつくきっかけはなんだったのでしょうか?
2010年に、若い作家の発表の場としてGallery PARCを創設したことでしょうね。デニッシュの製造販売にもどん底時代がありました。人もお金もない、持っているものといえば、デニッシュを製造する技術と、生まれ故郷である京都というブランドだけ。だからこそ、この土地からどれほどの恩恵を受けているかを感じながら、 京都の持つ伝統や文化という特性を生かせるコンテンツで企業文化やブランド文化を育んでいかなければいけないと思っていました。
 
そんな思いから生まれたものの一つがGallery PARCだった。私も最初はギャラリーのことなど全く分からなかったんですが、現在のディレクターである正木裕介(まさき・ゆうすけ)に繋がって。アートというプラットフォームで、京都に多くある芸術大学とも連携しながら若い人を応援したい。そんな気持ちを彼と共有してスタートしました。開設当初は、文化貢献を目的としたギャラリーとはどうあるべきか?どのような性格を持つギャラリーにしていく必要があるだろうか?と、運営の方法や方針、その方向性を探りながら、企画に反映させていきました。展示レベルのクオリティを維持しつつ、創作の方向性に悩む学生作家をも導いていけるようなギャラリーを目指して。そんな日々を経て、ここまできました。2020年に新型コロナの影響を受けて展示スペースは閉鎖して、それまでのアーカイブの整理や外部での展示企画・運営を行っていましたが、来年春に新天地で再始動予定です。
 

—— はじめてのアート購入は?
最初に購入したアートに出会ったのもGallery PARCでした。個展を開催していた古賀くららさんの作品。当時は若い作家の作品を見ること自体が初めてだったので、作品の評価云々というよりも、直感で良いなと思って購入しました。

大和美緒さんの作品のある一角

これからに期待している作家の一人である大和美緒さんの作品のある一角

 
—— 暮らしのなかにアートがあることでの変化したことはありますか?
どれも若い作家の夢や希望がいっぱい詰まった作品ばかりですから、アートがあることでピュアなエネルギーに包まれる。自宅が一種のパワースポットのような、心地の良い空間になりましたね。
 

これからに期待している作家の一人である 大和美緒さんの作品のある一角。

 
—— 近年では、彫刻家・名和晃平さんや振付家・ダンサーのダミアン・ジャレさん、ピアニスト・作曲家の中野公揮さんなどの創作支援も行ってらっしゃいますね。
Gallery PARCを始めた頃は、創作に対して、どのような積み上げがあってこうなるのかというような理解も、まだまだ持ち合わせていなかった。“流氷のような”といつも表現しているんですが、彼らと関わり、そのプロセスを見れば、海に浮かぶ造形が作品だとすると、その下にはスタディがめちゃめちゃあるということが分かるんです。闇雲に始めるのではなく、そこには普遍的で骨太な方向性があって。
そういうことを知っていくと、若い作家の作品を見て、話をしたときに、何か感じるものがあったり、これからが見えてきたりします。

 

「若い作家の才能や夢の後押しとなり、
繋がりを温めるような収集をしていきたい。」

 
—— 今後、アートの購入や支援において、大切にしたいことは?
まずは、本業の生業からきちんとすること。グランマーブルのギフトの定義は「お客様の感謝の気持ちを商品に乗せて、お客様に代わって贈り届ける」です。デニッシュを製造する人も、それを梱包する人も、全てがその使命に向かって行く。ありがとうの気持ちを込めて贈るにふさわしいブランドであるのか。社内のスタッフに対しての考え方も同じことが言えます。スタッフを大切にできる企業でないと、お客様の感謝の気持ちを伝えるものとして相応しくない。人間でいうところの内面を磨くことですね。「グランマーブルは美味しいだけやないねん、何故なら…」と物語を語ってもらうことが、お客様の誰かに贈りたいという気持ちへ、そして、さらに新たなファンを呼ぶことへと繋がっていきます。
アートの収集や支援についても同様。高価なものや価値づけされたものの収集や、利益のための支援ではなく、才能の後押しとなるような、繋がりを温めるような、そんな収集をしていきたいと思っています。
 

—— 最後に、まだ見ぬ未来のアートコレクターへメッセージをお願いします。
自分自身の審美眼を磨き、応援したい人を見出し、一緒になって将来のブレイクスルーを夢見る。そんな収集こそが大きくアートを支えていくことに繋がるはずです。

山本正典

 


 

わたしの一枚 ロゴ

 

 
山本聖子《solid drawing of emptiness》、2011
 
自宅のリビングの大きな壁に収められている本作品と山本氏(左上)。これもGallery PARCでの出会った作品の一つ。
「不動産広告の間取り図をもとに作られている作品です。彼女のルーツは大阪の千里ニュータウン。間取りに象徴される画一化された時代において、生活のベースも、アイデンティティもそこにありながら、目指す芸術は自分の中から生まれ出でるものだと。この自宅をリノベーションした際に、この場所にはこの作品が絶対合うと思って確認したら、彼女のこの作品のためにこのスペースがあったかのように、サイズもテイストもぴったりだった。」その隣には、お祝いにと贈られた自邸の図面で構成された作品も。
 

自邸の図面をもとに作られた作品

自邸の図面をもとに作られた作品

メンテナンスできるよう作り込まれた扉は、開けたところも圧巻

メンテナンスできるよう作り込まれた扉は、開けたところも圧巻

with Art ロゴ

RELATED ARTICLES関連記事