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[SHOWROOM] マツシマのスタッフが注目のクルマを探求 Kiwakoto CRAFT-CARサービス FIAT500・ケータハムセブン

[SHOWROOM] マツシマのスタッフが注目のクルマを探求
「Kiwakoto CRAFT-CARサービス FIAT500/ケータハムセブン」(Kiwakoto 佐藤 愛)

 

マツシマホールディングスが展開する伝統工芸とカーライフを融合するブランド「Kiwakoto」では、1台の車を、職人の技と独自のアートディレクションの融合によって、唯一無二の空間にカスタマイズする「CRAFT-CARサービス」を提供している。
用いる技術は京を中心とする伝統工芸の技。お客様の好みに応じて、パーツを1点ずつオーダーメード。茶室よりもコンパクトな車内空間に、これまでにない新たな上質のかたちを演出している。
そんなCRAFT-CARサービスで仕立てた「FIAT500 Cinquecento」と「ケーターハム セブン スーパースプリント」を、Kiwakotoの佐藤 愛が解説します。

 
ケーターハム セブン スーパースプリント CHO570 2019年式
CRAFT-CARサービスで施工したのは、左右のサイドミラー、中央のルームミラー、ロールバーです。オーナーさんのケーターハム セブンを見に行って、デザインとして完成されていますので、装飾するところが無いという印象を持ちましたが、ミーティングを重ねるうちに、ミラーとロールバーをやりましょうという話になりました。
 

Kiwakoto CRAFT-CARサービスで装飾したケータハムセブン スーパースプリント

Kiwakoto CRAFT-CARサービスで仕立てたケータハム セブン スーパースプリント
左右のサイドミラー、中央のルームミラー、ロールバーをKiwakotoで誂えている

 
オープンカーでしかも車高がかなり低い車ですので、飛び石が心配でした。模様部分を漆で盛り上げる高蒔絵で装飾したのでは、石が飛んできて傷がつくと、修復ができなくなってしまいます。修復を前提の技法を選びました。
サイドミラーは、「白檀塗(びゃくだんぬり)」の応用で、漆と漆で絵柄をサンドしています。ミラー全体にベースの漆を塗って、乾燥したら漆で絵を描き、その漆に付着させるように金粉を蒔きます。固まったら漆でトップコートをします。一番上が漆の塗膜ですので、傷がついても修復しやすくなっています。
 

Kiwakoto CRAFT-CARサービスで装飾したケータハムセブンのサイドミラー富士山柄

富士山と波を蒔絵の技術で描いたサイドミラー

Kiwakoto CRAFT-CARサービスで装飾したケータハムセブンのサイドミラー チェッカーフラッグ柄

たなびくチェッカーフラッグを描いたサイドミラー

Kiwakoto CRAFT-CARサービスで装飾したケータハムセブンのルームミラー

透き漆で仕上げたルームミラー

Kiwakoto CRAFT-CARサービスで装飾したケータハムセブンのロールバー

透き漆で仕上げたロールバー

ここで使った漆は、琥珀色の半透明なもので、金の絵柄が透けて見えます。ルームミラーとロールバーは、金属の上に半透明な漆だけを塗って、金属の輝きが透けて見えるようになっています。
漆液は、漆の木から分泌される乳白色の樹液を採取したもので、その粘り気のある樹液をろ過し、木の皮などを取り除いたものを「生漆(きうるし)」と呼びます。生漆を均一に撹拌したり、加熱して余分な水分を取り除いたりして精製作すると、「透き漆(すきうるし)」と呼ばれる透明な飴色の漆ができあがります。
皆さんが良く知っている黒い漆は、精製作業で鉄粉をまぜ、酸化作用により漆を黒くしたものです。黒以外の色は、透き漆をベースに顔料を混ぜたものです。
表層に透き漆を塗って仕上げたものを「溜塗り(ためぬり)」といいます。透明といっても飴色がかった透明ですので、下の層の色がそのまま透けるのではなく、深みのある落ち着いた色になります。

 

精製した透き漆

精製したできた透き漆

透き漆を塗ったケータハムセブンのミラー

透き漆を塗ったミラー

透き漆は紫外線を浴びて透明度が上がっていき、美しい透明感のある琥珀色に変化していきます。透き漆で溜塗りをしたサイドミラー、ルームミラー、ロールバーは、時間の経過とともに下地の金属や金の絵柄がさらに透けて、輝きが増していきます。その経過もお楽しみいただきたいです。

 
 

FIAT 500 Cinquecento(チンクエチェント)
このチンクエチェントは、フルレストアされていて、全塗装された金色のボディーと、張り替えられた青とベージュのレザーシートが美しい車です。このカラーと統一感をもたせるよう、ホーンボタン、センターコンソール、シフトレバー、スターターレバー、ヒーターレバーを施工しています。
 

Kiwakoto CRAFT-CARサービスで装飾したFiat 500 Cinquecento

フルレストアされたFIAT 500 Cinquecento

 

Kiwakoto CRAFT-CARサービスで装飾したFiat 500 Cinquecentoの内装

Kiwakoto CRAFT-CARサービスで仕立てたFIAT 500の内装
ホーンボタン、センターコンソール、木製のシフトレバー、その後ろぬある木製のレバーをKiwakotoで誂えている

 
ホーンボタンは元々樹脂の黒いパーツだったものを、その上に蒔絵で「FIAT」を書きました。歴代のFIATロゴをオマージュし、蒔絵師が図案を書きました。「こんなロゴあったのか?」と思わせる遊び心があるデザインに仕上げています。
漆は元々飴色ですので、白の顔料を混ぜても真っ白にはなりません。白を表現したい時は、卵の殻を砕いて隙間なく埋め込んで表現します。卵の殻は表と裏で輝きが異なりますので、卵の内側に墨を塗ってから手で砕いて、わかるようにしています。中央部分は大きめの粒を隙間なく敷き詰めて、周囲の青い部分には、小さな粒々を一粒ずつ置いていきます。
FIATの文字の部分は、高蒔絵(たかまきえ)という、高く盛り上げて立体的に見せる技法を使っています。朱の漆を塗っては乾燥を何度も繰り返して、その部分だけ盛り上げます。盛り上げた部分に金粉を蒔きつけることで、立体的な文字に仕上げます。高くなればなるほど、価値は高く、技術も要求されます。

 

蒔絵で装飾したFiat 500のホーンボタン

蒔絵の技術で装飾したホーンボタン

砕いた卵殻を貼り付けるホーンボタン

細かく砕いた卵殻を一粒ずつ貼り付けていく

センターコンソールは、黒い樹脂で、レザー調の凹凸がありました。内装色にあわせて、青とベージュの漆で装飾しています。そのままでは漆をきれいに塗れないため、一度パテで埋めてフラットにしています。ベージュの漆で下塗りをして、その上にシートの色に合わせた青の漆を塗っています。漆は乾くとトーンが落ちるので、それを見越して調色しています。塗り立ては真っ青でした。
 
塗り専門の職人さんで「塗師(ぬし)」さん ハケを使って塗っていきますが、漆がたれてくるので、かなりのスピードで塗っていきます。漆は空気中の水分と合成して硬化するので、室(むろ)と呼ばれる湿度を一定に保った木の棚、押し入れのようなところに入れて硬化させます。
塗師さんが塗ったのは「塗りっぱなし」といわれていて、そこから鏡面仕上げにする職人さんが「呂色師(ろいろし)」です。艶を出すための専門の職種で、鹿の角を粉状にしたものやコンパウンドで表面を磨き上げます。人によっては布で磨き上げるひともいるのですが、今回お願いした方は指を使います。色々試したそうですが、指が一番いいということで、ひたすら指で磨いていきます。冬は大変で、指にささくれなどがあると漆に傷がついてしまうので、手の保湿がかかせないそうです。
センターコンソールのエッジのラインは、表層の青を削って下のベージュを出しています。削りすぎるとベージュも削れて下地が見えてしまうので、程よいところで止めて、その後に指を使ってミクロンの単位で鏡面仕上げをしていきます。
紫外線があたると、ブルーがだんだん薄くなって、ベージュが透けて見えてきます。その変化も楽しんでいただきたいです。
 

センターコンソールに青の漆を塗る塗師

素早く漆を塗る塗師さんの作業

指で鏡面に仕上げる呂色師

指を使って鏡面に磨きあげる呂色師さんの作業

けやきの木から作ったシフトノブ

けやきの木から作ったシフトノブ。中央は貝を埋め込んでいる

シフトノブの木に生漆を摺るように薄く塗る

木目をいかすため生漆を摺るように薄く塗る

シフトレバーも元々は黒い樹脂の部品でしたが、欅(けやき)の木で作りました。握りやすいように大きさや形状を設計しています。摺り漆(すりうるし)という技法で、木地に生漆を摺るように薄く塗り、木目の美しさを生かしています。真っ直ぐに白いラインが入っているところは、切り込み部分に貝を埋めています。
センターコーンソールにある、スターターレバーとヒーターレバーも欅の木でつくり、貝を埋めています。
 
このチンクエチェントの装飾には、5人の職人が携わっています。さりげないですが、伝統工芸の高度な技術と、ものすごい手間がかかって完成しています。
 

 

Kiwakoto 佐藤 愛 (SATO Ai)

印刷会社、顧問派遣サービスを通じて企業のマーケティングサポートを行ってきた。サポートだけでは商品を魅力的に伝えて市場に届けることはできない、自らつくり・届ける側になりたいという思いから事業に参加。A・STORYを通じて、提供者と消費者の距離をどんどん縮めていきたい。

 

京都市中京区 | カーライフ

Kiwakoto本店

 075-212-0500
京都市中京区河原町二条上る清水町359 ABビル1階
営) 10:30〜18:30
休) 不定休
HP https://kiwakoto.com/
Facebook @kiwakoto.kyoto
Instagram @Kiwakoto_kyoto

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