fbpx
<br />
<b>Warning</b>:  Illegal string offset 'title' in <b>/home/kamig/foresight-web.jp/public_html/wp/wp-content/themes/foresight/single.php</b> on line <b>52</b><br />
h

This is the Kyoto way Vol.03 「宇治のお茶屋 通圓」

京都を訪れる外国人に向けて英語で京都の情報を紹介するフリーペーパー「ENJOY KYOTO」とのコラボレーションで、「This is the Kyoto way」がスタートしました。伝統工芸や食などの個性豊かな京都の文化から、その継承・発展・創造に携わる人まで、通常の観光情報誌とは一味違った、京都の深い魅力を発信します。

 

創業から860年を迎えた通圓は、宇治の歴史そのもの。
古くから茶どころとして名高い宇治。京都市内中心部から南へクルマでおよそ30分、藤原家の別荘地として栄え、また源氏物語「宇治十帖」の舞台にもなった風光明媚な街である。「通圓」は奈良の元興寺の僧侶・道登により、かけられたといわれる日本最古の橋といわれている宇治橋のたもとに、いまも変わらず店を構えている。
通圓の創業はいまからちょうど860年前の1160年。日本最古の茶屋として知られ、その歴史は数多くある京都の老舗の中でも群を抜いて長い。しかし当時は橋守りとしてその歴史をスタートさせたのだという。橋守りとは、京都と奈良をつなぐ宇治橋を管理し、台風や豪雨の際には橋が流されるのを防ぐなどの役割を担ういわば番人のような仕事。初代にあたる創業者が源頼政という当時の京都で権勢を振るっていた武士からこの橋守りに任命されたことが通圓の始まりとなった。その後、次第に宇治橋を通る人々に茶を点て、提供し始めたことで「茶飲み処」としても知られるようになったのだという。この橋守りの仕事は明治維新と呼ばれる19世紀後半の近代化によって失われ、茶舗としての通圓の歴史が再スタートするのだった。
 

宇治のお茶屋 通圓

宇治橋から上流を望むと平等院と宇治神社をつなぐ朝霧橋と、その向こうに連なる美しい山々の風景が広がる

 

もともと宇治川の水は、茶を点てるのに適しているのだという。中でもとりわけ「三の間」と呼ばれる宇治橋の橋脚が出っ張っているところ、そのあたりはちょうど川底から湧き出ている地下水と、上流の岩に磨かれてまろやかになった川水とが混じり合う場所であることがその理由とされている。天下統一を成し遂げ、戦国の世を終わらせた豊臣秀吉が宇治に来訪した際、ここ通圓でお茶を飲み、たいそう気に入ったため「三の間で汲んだ水で茶を点てるように」と、茶人として有名な千利休に命じ、専用の釣瓶を作らせた。その釣瓶はいまも通圓の店に受け継がれ、店頭で目にすることができる。そしてアニメのキャラクターとしても親しまれている一休宗純という僧侶が当時親交のあった7代目のために残した句や木像が残されているほか、日本の伝統芸能である狂言にも「通圓」というタイトルの演目が存在する。まさに通圓は、いにしえの歴史を現代に伝える文化財そのものなのだ。
 

宇治のお茶屋 通圓

宇治橋の中央あたりにある出っ張った場所が「三の間」。現在も茶まつりの際にはここから宇治川の水を汲み上げている

宇治のお茶屋 通圓

秀吉が千利休に命じて作らせた釣瓶は、秀吉の五七(ごしち)の桐(きり)の紋とともに保存されている

宇治のお茶屋 通圓

店内には7代目・通圓が当時親交のあった一休和尚より賜った「初代通圓」の木像が祀られている

24代目・通円祐介が、次代へと受け継いだバトン。

創業から数えて24代目となる通円祐介は1981年生まれ。現在39歳の若き経営者である。
じつは通円家とマツシマホールディングスの縁は深い。祐介氏自身も大のクルマ好きで、家族用のファミリーカーとは別に、趣味で乗るためのスポーツ車も所有し、TPOに応じて使い分けているのだが、現在の彼の愛車であるAUDIもマツシマホールディングスで購入したクルマ。しかもその付き合いは、彼の父である23代目・亮太郎から続くものだった。

チューンナップやアクセサリにこだわるのもクルマの楽しみだという祐介氏。ただし手を加えすぎてもダメで、それはお茶のブレンドのコツによく似ていると語る。たとえば欧州のカーブランドはエンブレムを見なくても、そのフォルムや佇まいでブランドがわかる。お茶も同じように、お茶屋さんごとに異なる「味筋」といわれる味の個性を持っている。しかし、あまりその個性を主張しすぎてはいけないのだ。「好きな人にはわかる」くらいの加減でとめおくこと。それこそが長く愛されるブランドになるための秘訣なのだという。800年以上続く老舗が語るのだから、説得力がある。

宇治のお茶屋 通円祐介

通圓24代目となる通円祐介氏。来店されたお客様には主人である祐介氏が、自ら一服の煎茶を淹れてくれる。会話しながら味の好みを探るためでもあるという

さて、860年にわたる歴史サーガにおける最新章を描くという大役を担う彼ではあるが、子どもの頃は宇治川でバス釣りをしたり、裏手にある大吉山で虫取りをしたりする活発でありふれた一人の少年だった。
「小さい頃はそもそも職業選択の自由があるということを知りませんでした。みんな家の仕事が自分の将来の仕事になるんだと思っていましたから。いまもうちの長男のことを周りの大人がすでに「25代目さん」とか「後継ぎさん」と呼んでいるんですが、ああなるほど、こうやって自然に後継としての覚悟が育てられていくんだなあとわかりました」
かつてはお店が遊び場だったという彼は、ここでお茶の袋詰めを子どもの遊びのように手伝っていた。そしていま、彼の息子も同様にお店で遊ぶのが大好きなのだという。
 
大学に入るとクラブDJとしてイベントを主催したりもした。一見、DJとお茶屋さんという仕事の間には大きくへだたるイメージがある。しかし「お茶のブレンドは、DJでいうミックスだったり選曲だったりという作業にとてもよく似ているんです。たとえば香りの足りないお茶には香りのあるお茶を、甘みの足りないお茶には甘みのあるお茶をブレンドする。そういう調整をしていくところは、DJ時代に学んだことがとても役立っていると思います」と話す。
その後、大学を卒業し、正式に店で働くようになると、それからわずか8年ほどで彼は代表取締役として通圓の代表となった。当時まだ30歳だった。その時に彼が痛感したのが、通圓という看板の重さ。350年ほど前からと言われているこの建物はじめ、茶壺、お茶の味筋、そしてお客様も、すべて代々受け継いできたものである。曽祖父の時代から三代にわたってずっとお客様だったという人が訪ねて来たこともあった。「いにしえの先祖から先々代や先代がしっかりとバトンを受け継ぎ、残してくれたものをお借りして商売させてもらっているんです」。そう彼は語る。そして子どもができたいま彼が思うのは、そうした財産をただそのまま受け継ぐのではなく、少しずつでも増やして後世に伝えていきたいということだった。
 

宇治のお茶屋 通圓

来店されたお客様には主人である祐介氏が、自ら一服の煎茶を淹れてくれる。会話しながら味の好みを探るためでもあるという

 

次の800年に向けた、宇治茶のルネサンスが始まる。
時代とともに人々が求めるお茶の美味しさの基準が変わってきている。だから彼は新しい試みも始めている。通常、宇治のお茶屋さんではお茶をブレンドして販売することが多いのだが、彼は一軒の茶農家の、ひとつの畑だけから取れた、ひとつの品種のお茶を売ることを始めた。また、パッケージの内容量を減らした。父親の代では200gといった多めの量で売ることが基本だったが、いまは100gあるいは50g、30gから購入できるようにしたのだ。かつてのように家族みんなで飲むのではなく自分一人で飲む人が増えたほか、毎日は飲まないけどたまに飲みたい、あるいはいいお茶を少量だけ欲しいという人が増えて来た。とくに海外からの<お客様は、いいお茶を少量買いたいという人が多いのだという。こうした消費スタイルの多様化に対応したことで、若い人や外国のファンも増えたと彼はいう。 また、かつてに比べて消費者もお茶について詳しくなってきている。これまでは抹茶か煎茶かもわからずに買っていた人が多かったが、いまはインターネットなどで事前に調べてくる人も多いのだそうだ。 「先日、外国からのお客様で『この玉露はごこうの品種ですか?』という質問を受けました。その人はこれまでお茶を買ったことはなかったそうですが、調べて来たというんです。そこで、ごこうの入っているお茶を教えてあげるとすごく喜んでくれました」  

宇治のお茶屋 通圓

古くからお茶の産地として知られる宇治。なかでも「玉露」はまろやかな甘みと豊かな香りが特徴の高級茶として人気が高い

宇治のお茶屋 通圓

30g袋入の玉露と煎茶

 

最後に彼は、今後の夢について語ってくれた。
「もっと街の中で気軽に若い人が参加できるイベントをやりたいなと思います。リッチー・ホーテンという世界的なDJが日本酒のイベントをクラブでやっているみたいに、お茶もそういうカジュアルな形で楽しめるイベントがあったらいいねという話は同世代の仲間としています」
そのうえで彼は、若い世代だからといって新しいお茶ばかり広めるのではなく、むしろ失われてしまった宇治茶本来の製法で作られた、伝統的なお茶の味を復活させたいと考えているのだという。860年の歴史を誇る茶舗の、新世代が、伝統の宇治茶を復活させる。24代目・祐介が紡ぎだそうとしている宇治茶サーガの最新章は、この茶の都・宇治にルネサンスをもたらすことになるかもしれない。

 

宇治のお茶屋 通圓本店

宇治橋東詰め、京阪電車宇治駅の真ん前に立地する通圓本店

 
 

ENJOY KYOTO

通圓

Tel: 0774-21-2243
Fax: 0774-22-5348
Email: tsuen@carrot.ocn.ne.jp
営業時間: 午前9:30〜午後5:30 年中無休
京都府宇治市宇治東内1番地
HP: http://www.tsuentea.com/

記事協力: ENJOY KYOTO

RELATED ARTICLES関連記事